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災害看護とは

刻々と変化する状況の中で被災者に必要とされる医療および看護の専門知識を提供することであり、その能力を最大限に生かして被災地域・被災者の為に働くことである。したがって、被災直後の災害救急医療から精神看護・感染症対策・保健指導など広範囲にわたり、災害急性期における被災者・被災地域への援助だけでなく災害すべてが災害看護の対象となる。

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投稿者: admin 投稿日時: 2016-5-30 17:35:57 (122 ヒット)

 熊本地震は5月20日で5週間を経過しました。被災地は慢性期に入っています。震災関連死を減らすためには何が必要かQ and Aを作りました。 

Q:今回の地震の特徴は何でしょうか?
3点あるのではないかと思います。
① 観測史上例のない震度7が始め2回起こりました。その後も余震が頻回に続いています。被災者に大きなストレスを与え続けています。
② 益城町など被害が大きかった町村では厳しい避難生活が続いています。避難所だけでなく車中とテント避難を続ける人が多いです。
③ 要介護高齢者の保護が遅れた可能性があります。

Q:2回の震度7はどのような影響を与えたのでしょうか?
 その象徴が肺塞栓症の早期多発です。新潟大学医学部榛沢和彦先生によると中越の肺塞栓症で亡くなった6人は3日目に1人、残りの方は5から7日目に発症しました。今回は最初から多数の人が発症し3日目に2人の方が亡くなりました。今回も車中避難が多く、行政・ボランティア・マスコミは避難者に肺塞栓症の予防を呼びかけました。その後も肺塞栓症は続きましたが、亡くなった方はほとんどいないようです。宣伝の効果があったと思われます。

Q:災害ストレスでどのような病気が増えるのですか?
過大なストレスがかかると循環器が最も影響を受けます。余震が長くつづいた中越地震(2004年)では、震災関連死の約6割は循環器疾患でした。また今回は厳冬期を外れており、中越地震と同様の傾向になると思われます。

Q:ストレスはどのように体に異変を起こすのですか?
精神的ショックと過酷な避難生活は血圧を上げ、同時に起こる脱水と相まって血液の粘度が上昇し、心筋梗塞、心不全や脳卒中などを起こしやすくします。また免疫力が低下して肺炎が起こりやすくなります。

Q:震災関連死は何人くらい発生すると予測されますか?
 5月11日段階での震災関連死は19人(18人までは全員が10日以内の死亡)と報告されています。復興庁によると東日本大震災の岩手県と宮城県の震災関連死(2015年9月末までの集計)は1週間以内に死亡は24%、1か月以内33%、1ヶ月以上43%でした。東日本大震災では劣悪環境が長期に持続したため、1ヶ月以上の比率が高くなったと思われます。中規模震災では1週間以内、1ヶ月以内、1ヶ月以上で各々1/3ずつに分布するのではないかと考えられます。今後の発生や家族が申請していないケースを考慮すると数十人以上になると思われます。これ以上関連死を増やさない取り組みが求められています。

Q:益城町の状況はどのようなのでしょうか?
 被災地は2極分化しています。益城町は最も被害の大きかった自治体で、今なお多数の避難者を抱えています。避難者数の推移をみると一目瞭然です。最も避難者が多かった4月17日には熊本県の避難者数は18.4万人、熊本市は10万8千人、益城町は7910人でした。
 第4週目、5月13日の避難者数(と17日に対する比率)は熊本県1万5百人(6%)、熊本市は4256人(4%)まで低下しましたが、益城町では3402人(43%)と高いままです。第5週目、5月20日の避難者数は熊本県9838人(5%)、熊本市2780人(3%)とさらに減少しています。一方、益城町は3289人(42%)とわずかに減少したに過ぎません。益城町は人口(33,632人)比率でも10%です。
 熊本県全避難者に対する益城町の割合ですが、4月17日には4%でしたが、第3週目には30%まで占めるに至っています。
 避難所だけでなく、車中やテントや自宅で厳しい生活を強いられている人が今なお多い状況です。(避難者の比率が次に高い町村として、御船町、嘉島町、南阿蘇村、西原村があげられます。)

Q:要介護高齢者などの保護は遅れたのですか?
 中越地震(2004年)では在宅の要介護高齢者の緊急入所は約2週間で完了しました。要介護の高齢者や足腰の弱い高齢者などは過酷な避難生活に耐えられないからです。しかし今回は遅れたようです。4月29日(2週間目)に益城町の避難所に行きましたが、車椅子の高齢者や弱っている高齢者を見かけました。行政は初災後すぐ、施設に要配慮の住民を保護する福祉避難所の開設を依頼しましたが、大半の施設では近所の住民が避難してきていました。また被災で職員不足に陥っており、新たな要介護高齢者を受け入れる余裕は無くなっており、大半の施設は開設を断らざるを得ない状況でした。背景として震災前からの職員不足状態があると思われます。

Q:震災関連死はどこで発生しているのですか?
 震災が起こると、避難所が注目されます。避難所で震災関連死が起こっているかのように思ってしまいがちです。復興庁によると東日本大震災の震災関連死(岩手県・宮城県)の発生場所は避難所が18%に対し、病院16%、介護施設等13%、自宅や知人親戚宅(在宅)は48%でした。
 幼児や障害児、認知症の家族がいる、障害や持病があるなど、さまざまな事情を抱え避難所を避けて自宅や車中やテント泊を余儀なくされている人たちがいます。避難所などと比べて、在宅で高リスクの人にはどうしても目が届きにくくなります。とくに一人暮らしの高齢者への配慮が必要です。地域を集中的に訪ねるなどして、弱ってきた人をいち早く見つけ、再開した医療や介護サービスなどにつなげることが大事です。

Q:震災関連死をこれ以上ふやさないためには?
 発生から4週目に入いりましたが、大半の人の生活場所は在宅となります。一部の地域を除きライフラインの回復に伴い、避難所から家に戻る人が増えるからです。
ポイントは5点あります。
① これまで耐えてきた人も疲労が蓄積し、病気が出てくる時期です。後期高齢者、障害者、持病のある人など高リスクの人を把握してフォローしていくことが大事です。
② 足腰が弱る(生活不活発病の)高齢者が増えてきます。また物忘れが進みます。体操や歩行は廃用だけでなく肺塞栓症も予防してくれます。再開した福祉在宅サービスを活用することです。
③ 地元を遠く離れたがらない高齢者は多い。同時に福祉施設へ支援スタッフの派遣を行わないと、要介護高齢者の緊急保護や福祉避難所の開設が進まないでしょう。また有老老人ホームやサービス高齢者住宅の空室を介護保険の弾力的運用にて活用しては如何でしょうか。
④ テント避難者へ別途対策が必要です。
⑤ 夏に向かって感染症(食中毒)と熱中症対策が重要です。

Q:テント避難者への対策は?
 まだかなりの被災者はテント避難を続けています。テントを選択する主な理由は避難所の過密環境と思われます。避難所人口を減らすためには別途避難所の開設が必要です。益城町はホテル・旅館・公共宿泊施設の提供(5月17日現在326人申し込み)を開始しましたが、さらに近隣市町村より避難所の提供を受けては如何でしょうか。
 テント生活は梅雨と夏に向かって非常に厳しくなります。すのこやターブ(テントの覆い)の配布など少しでも環境を良くする工夫が必要でしょう。また日中は涼しい場所への誘導「避難」が求められます。

Q;これから夏に向かいます。夏の健康対策について教えて下さい。
 3週間までの疾患予防の重点は感染症(インフルエンザとノロ)と肺塞栓症でしたが、これからは感染症(ノロ、食中毒)と熱中症です。こどもと高齢者病弱者が重症化しやすので特に注意が必要です。食中毒対策としては、食材を触る前後に手洗い、野菜はよく洗う、肉や魚は十分火を通す、包丁やまな板はよく洗うなどが大事です。熱中症対策としては、日差しを避ける、室内を涼しく保つ(暑いなら日中はクーラーの効いた場所に移動する)、こまめに水分をとるなどが必要です。

Q:いつまでが慢性期なのですか?
 震災後の住民の健康状況と医療介護支援は時間の経過とともに大きく変化していきます。時期ごとに区分したものを災害サイクルと呼びます。初災後3日から1週間が急性期、2週間までが亜急性期です。3週目から慢性期に入ります。地域がそれなりに落ち着いた段階で、医療機関や介護サービスはほぼ再開しています。3ヶ月以降に仮設住宅への移住で慢性期は終わり、平穏期に移行します。
健康は住まいからです。震災関連死を減らす根本対策はライフラインの復旧と仮設住宅の早期建設です。またボランティアによる片付け支援も必要です。

Q;仮設住宅での注意点は?
やっと仮設住宅に入れ、足を伸ばして休めるようになった時に被災者が襲われるのは疲労の自覚と孤独です。隣の人は見知らぬ人のため近所つきあいを一から始めなければならないからです。
仮設住宅の最大の課題はコミュニティ作りです。仮設住宅にはできるだけ地域がまとまって入れるように配慮したり、住民交流やボランティア支援のため集会所を設ける必要があります。慢性期の支援の主な場所は在宅ですが、平穏期の支援は仮設住宅にシフトします。
5月16日熊本県は益城町に応急仮設住宅516戸を追加建設(合計677戸)することを発表しました。入居者に要援護高齢者は少なくありません。ケア型仮説住宅、あるいはデイサービスの併設が望ましいと思われます
(2016/5/24改定)